
- はじめに
- 上流工程の精度が低い
- 発注者スキルの欠如
- 発注者の責任と役割
- コミュニケーションの齟齬
- コミュニケーターに求められるスキル
- セキュリティやクオリティに対する意識の違い
近年、あらゆる領域でDX化が急速に進む中、国内のIT人材不足を補う手段の一つとしてオフショア開発が注目されています。通信環境やSNS、コミュニケーションツールといった技術の発展により、越境のハードルは下がり、誰でも簡単に海外のエンジニアリソースを確保し、活用できるようになりました。
しかしその一方で、プロジェクトのハンドリングを誤ると、納品物が「思っていたものと違う」「まともに動かない」など、取り返しのつかない事態を招くリスクもあります。実際に弊社でも、開発が途中で頓挫し、「成果物が納品されない」「予算も失ってしまった」というプロジェクトの巻き取りの相談を受けた経験があります。
弊社では、2015年頃からベトナムを拠点とするテック企業との取引を通じて、オフショア開発のノウハウや体制を構築してきました。そこで得た経験と知見をもとに、オフショア開発が失敗する理由や陥りやすい傾向についてお話ししたいと思います。
上流工程の精度が低い
オフショア開発に限らず、失敗事例の多くは開発プロセスの上流工程におけるミスに起因します。クライアント、代理店、プロジェクトマネージャー、開発者など、プロジェクトに関わる全てのプレイヤーがアウトプットに対する共通理解を深めるための重要な工程ですが、内容の擦り合わせが不十分であったり、大事な工程をスキップして開発者に丸投げしてしまうケースも多く見られます。
クライアントから要件を漏れなくヒアリングし、仕様に落とし込み、レビューと改良を重ねる。この作業を丁寧に行わなければ、特にオフショア開発ではほぼ確実と言っていいほど失敗します。
発注者スキルの欠如
開発プロジェクトが失敗すると、通常は開発側が責任を問われます。しかし原因を分析すると、発注者側に問題があることも少なくありません。例えば、要件が曖昧なまま開発をスタートし、納品までプロジェクトに関与しないケース、低コストを重視して重要な工程を省略してしまうケースなど、発注者の誤った選択が失敗の原因となることが多々あります。
こうした事態を避けるためには、発注者が自身の責任と行動項目を明確に理解することが重要です。以下に、発注者として最低限必要な役割を挙げます。
発注者の責任と役割
- ソフトウェア開発を通して実現したいこと、目的、要件を明確にする。
- ソフトウェア開発の流れ、各工程の目的や重要性を理解する。
- 予算や見積もりの妥当性を検証し、適切に判断する。
- 特に上流工程において、積極的にコミュニケーションを取る。
- 受け入れテストを丁寧に行い、要件が全て満たされている事を確認する。
コミュニケーションの齟齬
オフショア開発において大きな障壁となるのはコミュニケーションです。言語の違いはもちろん、習慣や文化、感覚や意識の違いなどを理解した上で適切にコミュニケーションを取る必要があります。また、ソフトウェア開発という専門領域であることから、単なる言語翻訳だけでなく、クライアントの要件をシステム仕様に落とし込み、効率良く開発を遂行する舵取り役が必要です。こうした役割を担うコミュニケーターは、プロジェクト成功の鍵を握ります。
コミュニケーターに求められるスキル
- コミュニケーション:ニュアンスなどの違いを汲み取り、言語翻訳するスキル
- 技術リテラシー:ソフトウェア開発に関する知識
- 要件定義:クライアント要件をシステム仕様に落とし込む設計スキル
- 開発ディレクション:要件・仕様通りに開発が進行しているかを監視し、リードするスキル
- 品質管理:ソフトウェアの品質を高めるためのテスト計画と実行能力
上記全てをカバーするSE(システムエンジニア)をブリッジエンジニアと呼びますが、専門性の高さゆえにとても希少な人材です。全てをカバーできなくとも、高レベルなコミュニケーション能力と技術力を持つコミュニケーターの存在が、開発プロジェクトではとても重要です。
セキュリティやクオリティに対する意識の違い
高セキュリティ・高品質が当たり前と考える日本人に比べ、東南アジア諸国のエンジニアは、セキュリティやクオリティに対する意識が一般的に低いです。この意識の違いは、テストやデバッグ、必要なコミュニケーションに膨大なコストがかかる原因となります。
そのため、日本人の感覚に近づけるための各種教育やトレーニングの実施が重要です。特に個人情報や機密情報を扱うプロジェクトでは、高い意識を持ち、ガバナンスが効いたチームの編成が不可欠です。
以上、オフショア開発が失敗する理由と成功の鍵についてお話ししました。弊社では、日本側に高いスキルを持つブリッジエンジニアを採用し、海外にはガバナンスの効いたエンジニアリングチームを構築することに力を入れています。
オフショアやソフトウェア開発でお困りのことがあれば、ぜひ一度ご相談ください!